新築住宅シックハウス症候群とは?原因となる化学物質と人体への影響について

注文住宅の基礎知識

長年の友人が、新築マンションへの引っ越しを契機に、涙目や鼻水、頭痛に悩まされ、シックハウス症候群の可能性があると診断されました。いったいどんな病気なのでしょうか? 彼女の経験や症状、厚生労働省のホームページからの資料を基にご紹介します。

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新築住宅 シックハウス症候群とは?

かつての日本の家屋は部屋の仕切りが、ふすまや障子。欄間を使い、風が抜ける冬は寒さの厳しい構造でしたが、現代の住宅は合板の建材・断熱材・アルミ窓を使い高気密性能を備えています。

外気の温度や騒音の影響を受けにくい快適な住環境にはなったのですが、24時間換気システムを導入していない高気密住宅では、建材に使われている接着剤・塗料・溶剤に含まれる化学物質を含んだ空気を吸い・触れる事を原因に、また、カビやダニ、湿度状況が室内の空気を通じて接触する事を原因に、人体に悪影響を及ぼしている事が分かっています。

厚生労働省の資料によると、医学的に確立した単一の疾患ではなく、居住に由来する様々な健康障害の総称を意味する用語とされています。

  • 建材が、かつての自然素材(障子・漆喰・畳)から、複合フロア・断熱材など化学物質を含む建材に移行したこと。
  • 住宅の気密性改善により、化学物質やカビ・ダニが外に逃げにくいこと。

この2点が、大きな原因と考えられています。

新築住宅 シックハウス症候群の症状は?

友人のケースは、鼻水・涙目・頭痛と、花粉症をまず、疑った症状だったといいます。

耳鼻咽喉科系への影響

  • 鼻が乾燥したり、逆に鼻水が止まらない
  • 目がチカチカして、涙目になる
  • 口びるや、喉が乾燥する。咳がとまらない

その他症状

  • めまい・吐き気・頭痛・倦怠感
  • じんましんや湿疹など皮膚への症状が出るケースもあるそうです。
  • 室内環境から離れると症状改善する場合、シックハウス症候群を疑う。
  • 新築住宅の場合、約3ヶ月後にはホルムアルデヒドとトルエンの濃度がかなり減少し、症状が消えることもあるそうです。

           出典:愛知県衛生研究所 シックハウス症候群 

新築住宅シックハウス症候群 関連化学物質と人体への影響

化学物質 特徴 人体への影響
ホルムアルデヒド 刺激臭のある無色の気体。35~37%水溶液がホルマリン。ホルムアルデヒド入りの接着剤は合板やパーティクルボード等に使用。 濃度0.08 ppmで異臭、3 ppmで目や鼻に刺激、4~5 ppmで涙目・呼吸器に不快感。50 ppm以上で肺炎などで死亡することも。長期的には、発がんの可能性もあると言われている。
トルエン 無色の液体でシンナーの様な匂い。接着剤や塗料の溶剤及び希釈剤として使用。

 

臭いを感じる濃度は約0.048 ppm。高濃度になると目・気道に刺激を感じ疲労感・吐き気・中枢神経系にも影響が。意識低下や不整脈を起こすことも。
キシレン 無色でガソリン臭。着剤や塗料の溶剤及び希釈剤として用いられる。 200 ppm程度の濃度で目・鼻・のどが刺激を感じる。
パラジクロロベンゼン 家庭内では衣類の防虫剤やトイレの芳香剤として使用される。 15~30 ppmで臭気を感じ、80~160 ppmで目や鼻に痛み。
エチルベンゼン 接着剤や塗料の溶剤及び希釈剤として使用。 10 ppm以下でも臭気を感じ、高濃度(数千ppm)はめまいや意識低下等の症状。
スチレン 高分子化合物の原料として使用。この樹脂を使用した断熱材・浴室ユニット・畳心材・家具等に未反応のモノマーが残留していた場合、室内空気中に揮散する可能性がある。 60 ppm程度で臭気。200 ppmを超えると不快感。600 ppm程度で目や鼻に刺激感。800 ppmで目・のどに強い刺激を感じ、眠気や脱力感を感じる。
クロルピリホス 有機リン系の殺虫剤。しろあり駆除として使用。平成15年7月、改正建築基準法施行により、居室を有する建築物への使用禁止。 軽症の中毒症状は、倦怠感・頭痛・めまい・吐き気等。重症の場合、縮瞳・意識混濁・けいれん等、神経障害を起こす事も。
フタル酸ジ-n-ブチル 塗料、顔料や接着剤に、加工性や可塑化効率を向上させるために使用。 高濃度に暴露すると、目・皮膚・気道に刺激。内分泌攪乱作用を有すると疑われる化学物質・環境ホルモン[注2]
テトラデカン 塗料の溶剤に使用されるほか、家庭内では灯油が発生源。 高濃度では刺激性及び麻酔性があるとされる。
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル 代表的な可塑剤で、壁紙、床材、各種フィルム、電線被覆等様々な形で利用される。 長期間の接触により、皮膚炎を起こすことがある。内分泌攪乱作用を有すると疑われる化学物質・環境ホルモン[注2]
ダイアジノン 有機リン系の殺虫剤。ペット用の首輪、マイクロカプセル化したゴキブリ用残留散布剤として使用。 軽症の中毒症状は、倦怠感・頭痛・めまい・吐き気等。重症の場合、縮瞳・意識混濁・けいれん等、神経障害を起こす事も。
アセトアルデヒド 接着剤や防腐剤に使用されているほか、写真現像用薬品としても使用。 目・鼻・のどに刺激があり、目に入ると結膜炎や目のかすみ。長期間接触で発赤や皮膚炎。高濃度の蒸気吸入で気管支炎や肺浮腫・麻酔作用・意識混濁等が出現。初期症状は慢性アルコール中毒に似ている。
フェノブカルブ 水稲、野菜などの害虫駆除に用いられているほか、家庭内では防蟻剤として使用される。 倦怠感・頭痛・めまい・嘔吐・腹痛等の中毒症状。重症では、縮瞳・意識混濁等を起こす。

[注1]:ppm(parts per million)は、空気中における汚染物質等の濃度の単位

[注2]:環境ホルモンとは、動物の生体内に取り込まれた場合、本来、その生体内で営まれている正常なホルモン作用に影響を与える外因性の物質

出典:愛知県衛生研究所 シックハウス症候群 

建築基準法による規制

室内空気汚染を起因とする健康被害を軽減するため、シックハウス対策として平成15年7月、建築基準法改正。上表に記載した化学物質のうち、ホルムアルデヒドとクロルピリホスに関してのみ、建築材料及び換気設備の規制が導入されています。

ホルムアルデヒド

内装仕上げの制限・換気設備の義務付け・天井裏の制限規定など、建材・換気設備の規制が設定されました。住宅の場合、換気回数0.5回/h以上の機械換気設備(24時間換気システムなど)の設置が義務付けられています。

ホルムアルデヒドが放散する合板等建材への等級制度

ホルムアルデヒドの放散量は、原則として F☆☆☆☆、F☆☆☆、F☆☆、F☆で表示。☆の数が多いほどホルムアルデヒドの放散量が少ない。住まいに使われている建材・施工材などを調べる目安にしましょう。

クロルピリホス

しろあり駆除剤等に使用されていたクロルピリホスの使用を禁止。

シックハウス症候群を引き起こす他の化学物質は規制なし

建築基準法で規制される化学物質は、ホルムアルデヒドとクロルピリホスの2つだけです。前述の表にあるシックハウス症候群を引き起こす化学物質は他にもある事から、建築基準法を満たすだけでは、体に安全だとは言えない様です。

まとめ

厚生労働省の資料 シックハウスの予防と対策によると、環境シックハウス症候群の対策として、こまめな換気や掃除が有効とされていますが、原因を探って行くと、ベストなシックハウス予防策は、身体に悪い建材を使った家に住わないことです。

つまり注文住宅建築業者・建設業者の方と良く、話をしながら化学物質をなるべく使用していない建材や、自然素材を慎重に選び、換気にも万全を付した健康住宅ことが、大切なご家族の健康を守るためには不可欠です

リフォームの場合には、24時間換気システムを導入し、室内と外気を常に入れ替え空気環境を改善すること、床材や床塗料には化学物質を放散するものが多いため、素材選びを慎重にし、建築業者さんとよく、話をして、シックハウス対策がほどこされた建材や、ホルムアルデヒドの放散量 F☆☆☆☆の建材を使うなど、できるだけ、自然素材に近い建材を使用することで、住環境をかなり変えることができるでしょう。

 

参考資料:
・Reiko. K. et.al., (2018) ミニ特集 住環境における健康リスク要因とそのマネジメント  科学的エビデンスに基づく『新シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル(改訂新版)』を作成して The Japanese Society for Hygiene, Volume: 73  issue: 2, page(s): 116-129
Reiko. K. et.al., (2018) 科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版)厚生労働省ホームページ
・愛知県衛生研究所(衛生化学部 生活科学研究室)シックハウス症候群
・厚生労働省 健康な日常生活を送るために シックハウス症候群の予防と対策

 

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